電車運転士はやめとけ? 元運転士は勧めます。きついのは見習いの9ヶ月
「電車運転士 やめとけ」と検索してこの記事にたどり着いた方へ、先に結論をお伝えします。
私は、勧めます。
運転士歴は10年弱。その間、辞めたいと思ったことは一度もありませんでした。ただし、楽な仕事だとも言いません。免許を取るまでの見習い期間、約9ヶ月は本当にきつかった。
この記事では、何がきつくて、何が誤解されているのかを、実体験をもとに書きます。
辞めようと思ったことは、一度もない
正直に書きます。運転士をしていて、辞めることが頭をよぎった瞬間はありませんでした。
理由は単純で、運転技術を磨くことに楽しさを感じていたからです。
電車の運転は、停止位置を数センチ単位で合わせる仕事です。ブレーキをどこで、どれだけかけるか。同じ車両でも、乗っているお客様の数で効き方が変わります。天候でも変わります。それを毎日繰り返して、少しずつ精度を上げていく。この積み重ねが面白かった。
もちろん、大変だと思う瞬間はあります。車両故障やトラブルが発生したときです。そういう日は、頭も体もフル回転になります。
それでも辞めようとは思いませんでした。移動手段というインフラの土台を支えているという気概があったからです。毎朝、同じ電車に乗る人がいる。その人の一日を、こちらが動かしている。そう思える仕事は、そう多くありません。
いちばんきつかったのは、覚えることの多さ
では何がきつかったのか。勤務時間でも、生活リズムでも、責任の重さでもありません。
最初の、覚えることの多さです。
教習所に入所してから約9ヶ月、ずっと試験がある
運転士になるには、運転免許を取るために鉄道教習所へ入所します。そこから免許取得までの見習い期間は、私のときで約9ヶ月でした。会社によっては1年近くかかることもあるようです。
この期間、試験が途切れません。
- 学科の試験 … 法規、車両の構造、運転理論などを座学で学び、その都度試験がある
- 学科の終了試験 … 座学を終えるための試験。ここを通らないと現場に出られない
- 現場での修練 … 実際にハンドルを握り、指導する運転士を横に乗せて技術を身につける
- 卒業のための実技試験 … 運転技術そのものを見られる試験
- 出庫点検の試験 … 車庫から車両を出す前の点検を、手順どおりにできるかを見られる
社会人になってから、こんなに勉強することがあるのか。当時の正直な感想です。学生時代よりも勉強しました。しかも、落ちれば免許が取れません。
ここを抜ければ、あとは現場で技術を磨いていく仕事になります。きついのは、最初の9ヶ月に集中しているというのが私の実感です。

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辞めていった人には、共通点があった
周りで実際に辞めた人もいます。振り返ると、理由は大きく2つでした。
ひとつは、運転の中に楽しさを見出せていなかった人。
運転士の仕事は、毎日同じ線路を走ります。同じ駅に停まり、同じ場所で減速する。この繰り返しを「単調」と受け取るか、「精度を上げる余地がある」と受け取るかで、続くかどうかが分かれます。
もうひとつは、人間関係がうまくいかなかった人です。
運転士は運転席に一人ですが、仕事は一人で完結しません。点呼で助役と話し、指令と無線でやり取りし、泊まり勤務では同じ場所で寝起きします。そこが合わないと、運転そのものが好きでも続きません。
逆に言えば、この2つが問題にならないなら、続く可能性は高いと思います。
「やめとけ」より先に知るべきは、採用試験と健康診断
ネット上では「電車運転士はやめとけ」とよく言われます。ですが私は、やめとけと言うほどのことは感じていません。
好きだったり、興味があったりするなら、チャレンジしてみたほうがいい。それが正直なところです。
そのうえで、現実的な話をします。
私の見る限り、いま鉄道会社はどこも人材不足です。 人を集めることに必死という状況で、就職そのものは以前より入りやすくなっていると感じます。
これは私の実感だけの話ではありません。国土交通省が「地域鉄道における運転士確保に向けた緊急連絡会議」を開催しており、資料には「人口減少社会を迎え、鉄道分野においても人手不足が深刻な課題となっています。特に地方部では、運転士の不足により運行本数を減便するといった事態が発生している」と書かれています。
国が緊急の会議を開くほど、運転士は足りていません。
ただし、一般常識の試験と健康診断は厳しいです。ここは覚悟してください。
なぜ厳しいのか。理由があります。運転士の免許を取るための試験に、そのまま関わってくるからです。
入社したものの、免許を取れる基準になかった。これでは会社も本人も困ります。だから入り口で見ます。運転士を目指すなら、ここが最初の関門です。
運転士をやってよかったことは、指令員になって分かった
私は運転士のあと、指令員も経験しています。
運転士の経験が本当に効いたのは、実は指令席に座ってからでした。
異常時に、運転士の立場ではどんな情報が欲しいのか。 これが分かるかどうかで、指令の仕事は変わります。
何かが起きたとき、無線でどんな情報を流すのが良いのか。運転士が今いちばん知りたいことは何か。どの言い方なら、運転席で一度聞いただけで頭に入るのか。
これは、実際に運転士として現場で働いた経験がなければ身につきませんでした。教科書には書いていません。運転席であの無線を聞いた側の記憶が、そのまま判断材料になります。
運転士をやってよかったことは何か、と聞かれたら、私はこれを挙げます。
「運転士はいらなくなる」は、本当か
もうひとつ、よく言われることがあります。自動運転が進むから、運転士はいずれいらなくなる、という話です。
これについての私の見方を書きます。
それは大手の鉄道会社の話です。 中小の鉄道会社では、まだまだ運転士に需要があります。
そして、運転士なしで列車を走らせるには、莫大な設備投資が必要です。線路も、信号も、ホームも、そのために作り直さなければならない。すぐに運転士が要らなくなるというのは、現実的ではありません。
時代の転換期にあるのは確かです。ですがそれは、「今から目指すな」という理由にはならないと考えています。
まとめ:好きなら、チャレンジしていい
- 私は運転士を辞めたいと思ったことが一度もない。運転技術を磨くのが面白かった
- いちばんきついのは免許取得までの見習い期間(私のときは約9ヶ月)。試験が途切れず、社会人になってから最も勉強した
- 辞めていったのは、運転に楽しさを見出せなかった人と、人間関係が合わなかった人
- 鉄道会社は人材不足(国土交通省も緊急会議を開催)で就職しやすくなっているが、一般常識の試験と健康診断は厳しい
- 運転士の経験は、指令員になったときに効いた。異常時に何を伝えるべきかが分かる
- 自動運転で運転士が不要になるのは大手の話。中小ではまだ需要があり、無人化には莫大な投資が要る
「電車運転士 やめとけ」と検索する気持ちは分かります。情報が少なく、きつそうな話ばかり目に入るからです。
ですが、現場にいた人間として言えるのは、やめとけと言うほどのことはないということです。好きなら、興味があるなら、挑戦していい仕事だと思います。
この記事でお伝えしたのは、運転士という仕事の全体像です。
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なお、運転士の実際の一日については別の記事で書きました。あわせてどうぞ。
この記事では年収の「数字」を中心に解説しましたが、「運転士になるプロセス」のリアルが気になる方には、有料note「元運転士が教える、運転士になるまでのリアルな全工程」(2,980円)をおすすめします。
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