駅係員の仕事内容は分単位で決まっている。元駅係員が一日の流れを書く
駅係員は、駅で何をしているのか。
外から見えるのは、改札にいる姿と、ホームに立っている姿くらいだと思います。求人サイトを開けば業務の一覧は出てきますが、一覧をいくら読んでも、一日の形は見えてきません。
この記事では、元駅係員として、出勤から仮眠までの一日を順番に書きます。あわせて、あまり知られていない業務と、いちばん神経を使う場面も書きます。駅員(駅係員)の仕事を、内側から見たままの形で残しておきます。
駅係員の一日は、ダイヤで分単位に決まっている
最初に、いちばん意外に思われることを書きます。
駅係員の一日は、ダイヤで分単位に決まっています。
ダイヤと聞くと列車の時刻表を思い浮かべると思いますが、駅係員にも駅係員のダイヤがあります。何時に何をするかが分単位で組まれていて、基本はそれに沿って動きます。「手が空いたから巡回に行こう」という働き方ではありません。
では、その一日を順に追います。
①出勤して制服に着替え、②点呼を受ける
出勤したら制服に着替え、点呼です。
点呼執行者から、まず心身状態の確認があります。そのうえで、前日にどんなことがあったか、当日と翌日に何が予定されているかが共有されます。
運転士の点呼も心身状態の確認から入りますが、駅係員の点呼は、その駅で起きていることを引き継ぐ色が濃くなります。乗務員側の一日は始発を担当する運転士が前日から泊まり込む理由に書きました。
③明けの人からの引き継ぎ
点呼のあとは、泊まり明けの人からの引き継ぎです。同じダイヤを担当する者同士で、細かいところまで引き継ぎます。
「何時の巡回のときに、こういうことがあった」
「券売機の締切作業で、こういう引き継ぎ事項がある」
こうした具体的な話が渡されます。駅の仕事は交代で回っているので、前の人が見たものを受け取らないと、同じことをもう一度確かめることになります。
④日中。券売機の締切、構内巡回、窓口対応
日中の時間帯は、主にこの3つです。
- 券売機の締切
- 構内の巡回と監視
- 窓口でのお客様対応
券売機の締切時間は各駅で異なります。この作業はあとで詳しく書きます。
そして基本は、窓口でのお客様対応です。ここが駅係員の中心にあります。
⑤休憩。昼も夜も、しっかり取れる
意外に思われるかもしれませんが、休憩時間はしっかり確保されています。
食事は自由です。大手鉄道会社では自社の食堂がある駅もあり、安く済ませることができます。外に出て食べる人も、コンビニで買ってくる人もいます。
⑥終電対応。他社線との「合図」
最終列車が到着するときは、終電である旨をお客様に案内します。
他社線との接続をとる駅では、もうひと手間あります。他社線から乗り換えてくるお客様がいなくなったことを、他社線の駅係員から合図してもらう。それを受けて、自社の列車に出発合図を出します。
合図を出す相手は、車掌が乗っていれば車掌、ワンマン運転なら運転士です。出し方は鉄道会社によって違い、ホームで直接合図を出すこともあれば、表示器を点灯させて伝えることもあります。
最後の一本は、会社をまたいで人の目で確かめてから出ています。
⑦終電後。シャッターを閉め、構内を回る
列車が終われば、シャッターを閉め、駅構内を巡回します。人が残っていないか、異常がないかを見て回ります。
⑧風呂に入って、仮眠
一日の仕事が終わったら、風呂に入って仮眠です。早番か遅番かで、終電対応をするのか、翌朝の初電対応をするのかが変わります。

あまり知られていない業務は、この3つ
業務一覧にはあまり出てこない仕事があります。現場に入ってから知るものです。
券売機の締切作業。 券売機の売上金を回収し、券売機側の記録と売上金が合っているかを精査します。紙幣計算機や硬貨計数機を使います。
遺失物の警察への送付。 駅で預かった落とし物は、一定期間保管したあと、所管の警察署に送ります。そのための伝票をつくるところまでが駅係員の仕事です。
ラッシュ時間帯の対応。 ホームでのご案内が中心ですが、窓口の前に立ってお客様にご挨拶をすることもあります。
いちばん神経を使うのは、お金と「どのカードか」
では、何がいちばん気を張るのか。
ひとつは、お金を扱う業務です。券売機の締切、窓口での交通系ICカードの精算。ここを間違えると、あとの対応が大変になります。
もうひとつが、交通系ICカードの再発行です。
カードを紛失したという申し出があると、お名前や残高などをうかがって、紛失の登録をします。ところが、お客様がカードを複数枚お持ちだと、どのカードのことを言っているのかが分からないことがあります。同姓同名の、まったく別の方のカードという可能性もあります。
ここで安易に登録してしまうと、紛失していないカードを止めてしまいます。急かされている場面ほど、急げない仕事です。
多い問い合わせと、忘れられないクレーム
問い合わせで圧倒的に多いのは、道案内です。
「〇〇(他社線の駅や、近くの施設)はどこですか」
「〇〇駅まで行きたいんですけど」
スマートフォンが普及して昔よりは減りましたが、この2つは今でも多いです。
印象に残っているのは、お客様の勘違いで激怒されたときのことです。
「1万円をチャージしたのに、千円しか入っていない。機械が壊れているんじゃないか」という申し出でした。
まずカードの履歴を確認します。千円チャージの記録がありました。1万円を入れて千円だけが入った、という記録ではありません。千円をチャージする操作が、そのとおりに行われた記録です。
つまり、お客様の勘違いです。
それでもお客様は認めず、激昂されました。こういうことは、よくある話です。これ以上になるようでしたら警察を呼びますとお伝えすると、ほとんどの方は納得して帰られます。
ちなみに、お釣りの取り忘れについて。券売機は、お釣りが出ると「ピピッ、ピピッ」と音で知らせます。この音があまりに長く鳴り続けていると、取り忘れているのではないかと気になります。 券売機室が執務室の近くにある駅なら聞こえますが、駅の構造によっては聞こえません。
慣れた人と差が出るのは、放送の言い回し
現場で身につく技のなかで、いちばん差が出るのは放送の言い回しです。
慣れていない人は、鉄道の専門用語をそのまま使ってしまいます。
たとえば「強風で規制値を超えたため、一時的に運転を見合わせます」。
規制値という言葉は、お客様には伝わりません。 「風速が、安全を確保できる範囲を超えました」と言い換えます。
もうひとつ。「一時的に運転を見合わせ」と言うと、運転見合わせというワードにだけ反応されて、窓口がパニックになります。 そうではなく、「風が収まるまで、当駅で停車します」と言う。
たった一言ですが、伝え方でその後の対応がまるごと変わります。放送のあとに窓口へ列ができるかどうかは、ここで決まります。遅れがどう広がるのかは遅れた列車の前を止めることがある理由に書きました。
「駅係員は楽そう」と言われますが
最後に、いちばん伝えたいことを書きます。
駅係員は楽そうだ、とよく言われます。
たしかに、基本はスケジュールで決まっていて、言われたことをやる場面が多い仕事です。そこだけ見れば、そう見えるのも分かります。
ですが、トラブルや異常時の対応では、その人自身の対応力がはっきり出ます。 決まっていないことが起きたときに何ができるか。ここに差が出ます。
それに、先ほどのクレーム対応や、酔われたお客様への対応のように、やりたくてやっている人などいない仕事も多いのです。
もうひとつ。駅係員なら他社線の駅の場所も知っている、という前提で話されることがあります。
鉄道が好きな駅係員なら知っていることもあります。ですが、普通の駅係員は知らないのが普通です。それを知っている前提で聞かれて、分かりませんと答えると、「駅係員なのに分からないのか」と言われる。これは、なかなか理不尽です。
まとめ:駅係員の仕事内容は、分単位のダイヤの上にある
- 駅係員にも駅係員のダイヤがあり、一日は分単位で決まっている
- 流れは、出勤→点呼→引き継ぎ→日中の業務→休憩→終電対応→終電後の巡回→風呂と仮眠
- あまり知られていないのは、券売機の締切作業、遺失物の警察送付、ラッシュ時のご案内
- いちばん神経を使うのは、お金を扱う業務と、交通系ICカードの再発行
- 慣れた人と差が出るのは放送の言い回し。専門用語を使わない言い換えができるか
- 休憩はしっかり確保される。食事は自由で、自社の食堂がある駅もある
駅係員の仕事は、決まった手順の上に成り立っています。ですが、決まっていないことが起きたときにどう動くかで、その人の仕事が決まります。
泊まり勤務の夜、駅係員がどこでどう眠っているのかは別の記事で書きました。この記事の⑧のつづきにあたります。
