鉄道員の仕事

駅係員はどうやって起きるのか。特別な目覚ましはなく、起床連絡があります

夜明け前の薄暗い部屋。ベッドの枕もとの棚に、文字盤が見えない向きで目覚まし時計が置かれている写真。「駅係員はどうやって起きているのか」という文字が載っている。
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「絶対に起きる目覚まし」を探してこのページにたどり着いた方へ、先に答えを書きます。

私がいた職場に、そんな道具はありませんでした。

置いてあるのは普通の目覚まし時計です。多くの人がそれにスマホのアラームを重ねます。運転士の個室には「起床装置」と呼ばれる備え付けの機器がありましたが、それも時刻をセットすると鳴って、ボタンで止めるだけのものです。

では、なぜ始発は毎日動くのか。そこには道具ではないものがあります。元駅係員・元運転士として、泊まり勤務の朝に実際に何が起きていたのかを書きます。

仮眠室にあるのは、普通の目覚まし時計です

駅で泊まるとき、部屋には目覚まし時計が置いてあります。個人で寝ることも、複数人で寝ることもありました。どちらの場合も、置いてあるのは特別なものではありません。

それでも、スマホのアラームも自分でセットする人が多いです。備え付けのものだけを信じる人は、あまりいません。二重にかけておく。理由は単純で、鳴らなかったとき、あるいは自分で止めて二度寝したときに、後がないからです。

運転士の個室にある「起床装置」

装置らしい装置と言えるのは、ひとつだけです。運転士が泊まる個室には、起床装置と呼ばれる機器が備え付けられていました。

やることは単純で、起床時刻をセットすると、その時刻にアラームが鳴ります。ボタンを押して止めます。それだけです。名前は仰々しいのですが、中身は目覚まし時計とそう変わりません。空気で膨らんでベッドが持ち上がるようなものを想像された方には、申し訳ないくらい地味な話だと思います。

なお、どこでどう眠っているのかは駅係員の仮眠室は快適ではないに書きました。寝る場所の話はそちらに、起きる話はこの記事に分けてあります。

誰も起こしに来ません。自分で起きます

ここがいちばん誤解されている部分かもしれません。

泊まり勤務では、全員が一斉に起こされるということはありません。早番と遅番で起きる時刻が違うからです。同じ部屋に泊まっていても、人によって起きる時間はばらばらです。

だから起床は個別で、基本的には自分自身で起きます。それが自己管理です。

誰かが起こしてくれる前提で寝る、ということが、そもそもない。この前提は、道具の話より先に来ます。

運転士と駅係員では、担保のしかたが違いました

同じ泊まり勤務でも、職種によって仕組みが変わります。理由は朝に点呼があるかどうかです。

運転士には、乗務前の点呼があります。だから点呼に来なければ、そこで気づかれます。起きてこなければ助役が起こしに来ることもあります。助役とは、現場を管理する役職の人です。

一方、駅係員には朝の点呼がありませんでした。前の晩に出勤していて、そのまま勤務が続いているからです。点呼という関門がない。だからこそ、別の形で担保する必要がありました。

起きたことを、人に連絡する決まりがあります

それが起床連絡です。

私がいた職場では、早番の駅係員は、起床したら他の駅係員に起床連絡をするという決まりがありました。起きたら、起きたと伝える。

そして連絡がないときは、業務用の携帯電話に電話がかかってきます。起床を促すためです。

ここで大事なのは、この仕組みが寝坊そのものを防いでいるわけではないということです。人は寝坊します。それを止めることはできない。この決まりが守っているのは、仮に寝坊しても、そこで気づいて間に合わせるという部分です。

どんな目覚まし時計も、手を伸ばして止められます。止められないのは、人からの電話のほうです。

始発が遅れると何が起きるのかは、電車運転士の一日は前日から始まるに書きました。一本の列車が遅れるだけでは済まない理由が、そこにあります。

起きてから点呼までは30分です

私の場合は、出勤時刻の30分前に起きていました。

やることは最低限です。制服に着替え、顔を洗い、お手洗いに行く。それだけで出ていきます。朝にゆっくりする時間はありません。

これは意図的にそうしていました。早く起きたところで眠いだけなので、最低限の準備ができる時間から逆算する。起きてから支度に1時間かかる人は、その1時間ぶん早く起きるしかありません。

眠れない夜もあります。それでも乗ります

正直に書くと、あまり眠れないまま朝を迎える日はあります。

そういう日にどうするか。眠くても仕事はしなければならないので、頑張るしかありません。特別な方法はありません。

そのかわり、明けで帰宅したあとにぐっすり眠ります。泊まり明けの睡眠は、次の勤務のための仕事のようなものです。

もっとも、最初からそう考えていたわけではありません。若い頃は体力があったので、明けでよく遊びに行っていました。年齢を重ねるにつれて、翌日の勤務のことを先に考えるようになった。眠っておくことも仕事のうちだと思えるようになったのは、あとからです。

駅係員の一日がどう組まれているのかは、駅係員の仕事内容は分単位で決まっているにまとめました。

起きられない人へ。原因は、たいてい前の日にあります

最後に、このページを探して読んでくださった方へ。

寝起きが悪い人がいるのは事実です。体質の差はあると思います。

ただ、現場を見てきた実感で言うと、起きられない日の原因は、たいてい前の日にあります。前日にあまり寝ていない。遅くまで遊んでいた。そういう心当たりがある日ほど、朝はつらくなる。結局のところ、自己管理の問題に行き着きます。

道具を増やしても、そこは変わりません。勤務の前の日に、遅くまで遊びすぎない。身も蓋もない話ですが、鉄道の現場で毎朝きちんと起きている人たちがやっているのは、これです。

そのうえで、もうひとつ。起きたことを誰かに伝える仕組みを、自分で作ってしまうことです。鉄道がやっているのと同じことです。一人で起きようとするから、止めて二度寝ができてしまう。

気合いで起きるのではなく、仕組みで起きる。それが答えでした。

まとめ

  • 仮眠室に置いてあるのは普通の目覚まし時計。多くの人がスマホのアラームを重ねる
  • 運転士の個室には「起床装置」があった。時刻をセットすると鳴り、ボタンで止める
  • 早番と遅番で起きる時刻が違うため、起床は個別。基本的に誰も起こしに来ない
  • 運転士は朝の点呼があるので、来なければ助役が動く。駅係員には朝の点呼がない
  • そのかわり起きたら起床連絡をする決まりがあり、連絡がなければ業務用携帯に電話が来る
  • この仕組みは寝坊を防ぐものではない。寝坊しても気づいて間に合わせるためのもの
  • 私の場合、起床は出勤の30分前。早く起きても眠いだけなので、最低限から逆算していた
  • 起きられない日の原因は、たいてい前の日にある

特別な目覚ましを探している方に、鉄道の現場から言えることは一つです。気合いではなく、仕組みで起きてください。

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