駅係員の仮眠室は快適ではない。眠るのは深夜1時、起きるのは6時半
駅の奥に仮眠室がある、と聞くと、静かな休憩室を想像されるかもしれません。実際は違います。
私が駅員(駅係員)だったころ、泊まり勤務の夜に眠っていたのは、深夜1時すぎから朝6時半ごろまででした。部屋は個室でベッド、冷暖房も付いています。それでも快適とは言えません。列車の音で目が覚めますし、駅の外を歩く人の話し声まで聞こえてくるからです。
この記事では、元駅係員として、仮眠室がどんな部屋なのか、何時に入って何時に出るのか、そこで実際に何が起きるのかを書きます。
いまは個室にベッド。以前は相部屋だった
現在の仮眠室は個室です。寝床は布団ではなく、ベッドでした。冷暖房も完備されています。部屋は定期的に清掃されるので、清潔感もあります。
ただし窓は、あったりなかったり。部屋によって違います。
以前は相部屋でした。相部屋の清潔さは、正直なところ一緒に寝る人次第です。誰と同じ部屋で眠るかによって、その夜の快適さが変わる。設備の問題ではなく、人の問題でした。
私がいた頃には、以前より寝室の整備が進んでいました。少なくとも相部屋の時代に比べれば、環境はよくなっています。
眠るのは深夜1時すぎ。終列車のあとに、まだ仕事がある
駅係員の泊まり勤務は、終列車が行ってしまえば終わり、ではありません。
終列車のあと、駅構内を巡回します。ただ見回るだけではありません。
酔ったお客様が残していった嘔吐物を清掃し、シャッターを締める。これも巡回のうちです。終列車が行ったあとの駅で、まだ仕事が残っています。
これを終えて、ようやくその日の業務が終わります。そこから風呂に入って寝床に入るので、布団に入るのは深夜1時を超えます。

駅係員の勤務は「仕業」ではなく「ダイヤ」
ここで、現場の言い回しをひとつ。
運転士は、その日担当する仕事のまとまりを「仕業(しぎょう)」と呼びます。ところが駅係員は、同じものを「ダイヤ」と呼んでいました。列車のダイヤではなく、自分の勤務のことです。
しかも、数字を付けて呼びます。「1ダイヤ」「4ダイヤ」といった具合です。
同じ会社の中でも、職種が変われば呼び方が変わる。鉄道会社によっても異なります。
早番と遅番で、起きる時間が変わる
朝の起床は6時30分から7時ごろ。ただしこれは、その日のダイヤによります。
早番にあたれば、始発が動く前に起きます。遅番なら6時半すぎまで眠っていられる。同じ仮眠室に泊まっていても、起きる時間は人によって違います。
なお、仮眠が途中で分割されることはありません。一度寝たら、朝までひと続きです。
眠れない夜は、スマホをいじって無理やり寝る
深夜1時に布団へ入って、すぐ眠れるかというと、そうでもありません。
大抵はスマホをいじっています。ただ、眠れないままでいると翌朝の仕事に影響します。だから、無理やりにでも早く寝ようとしていました。
これは眠気の問題ではなく、仕事の一部としての判断です。数時間後にまた駅に立つ以上、眠っておかなければならない。
列車の音で目が覚める。外の話し声まで聞こえてくる
仮眠室は駅の中にあります。当然、駅の音が届きます。
遅番で6時半ごろまで寝ているときは、列車の走行音で目が覚めてしまうことがよくありました。放送やアナウンスが聞こえてくることもあります。
そして、外の音も入ってきます。徹夜で遊んだ若者が駅の前で大声で話していれば、その声も届く。眠っている場所が駅である以上、避けようがありません。
内線が鳴るのは、緊急のときだけ
仮眠中に呼び出されることはあるのか。基本的にはありません。
遅番が起きてくるまでの仕事は、早番が担当します。ですから、お客様からの呼び出しで起こされることは、まずない。
そもそも早朝は、よほどのことがなければ、日中のようにお客様が次々といらっしゃる状況にはなりません。
呼ばれるのは緊急時です。これは何時でも起こり得ます。
たとえば車両故障や設備トラブルで、朝から運行に乱れが出たとき。こうなると早番だけでは対応しきれません。お客様へのご案内をするために、仮眠中の係員が起こされます。
起こし方は、内線です。部屋の電話が鳴る。あの音で起きた朝は、寝床を出た時点で、今日は普通の一日ではないと分かります。
持ち込むのは制服とスマホ。昔は若手が先輩の布団を敷いていた
仮眠室に持ち込むものは、制服とスマホくらいです。特別な荷物はありません。
明文化されたルールも、ほとんどありませんでした。ただ、周りに迷惑をかけないよう気を遣う。それだけです。同じ場所で何人もが眠っている以上、当たり前の配慮でした。
昔は、若手が先輩の布団を敷いていたこともあります。今では聞かなくなりましたが、そういう時代がありました。
快適な休憩室ではありません。あくまで仕事中の仮眠です
いちばんお伝えしたいのは、ここです。
仮眠室は、休憩室ではありません。あくまで仮眠であり、勤務の中にある時間です。
個室になり、ベッドが入り、冷暖房が付きました。私がいた頃も、環境は良くなってきていました。それでも、リラックスして眠れる場所ではありません。音は聞こえます。緊急なら内線が鳴ります。そして数時間後には、また駅に立ちます。
駅で夜を明かすというのは、そういうことです。
まとめ:駅係員の仮眠室で、実際に起きていること
- 個室にベッド、冷暖房も完備。以前は相部屋で、快適さは同室の人次第だった
- 終列車のあとに構内を巡回(嘔吐物の清掃やシャッター閉めも含む)し、風呂に入って寝るので、就寝は深夜1時すぎ
- 起床は6時30分〜7時ごろ。早番なら始発前に起きる。仮眠が分割されることはない
- 列車の走行音や放送、駅の外の話し声で目が覚めることがある
- 呼び出されるのは緊急時のみ。内線で起こされる
- 快適な休憩室ではなく、勤務の中にある仮眠
なお、運転士の泊まり勤務については別の記事で書きました。同じ会社でも、職種が変われば夜の過ごし方も変わります。あわせてどうぞ。
